仕事の話(あるいは、きっと何者にもなれないお前の話)

どうも。きっと何者にもなれない俺です。
そんなわけで、何者かになるための話をしたいと思います。

とある身近な人がおりまして、彼は某カタカナの名前の人の言葉を体現しているわけではないのですが、やりたいことを目指す代わりに、ボロアパートで風呂が共用という、とても貧しい生活をしています。(まー、目指し方が建設的ではないという、致命的な間違いを犯していますが)
本人も、そのままの生活でいいとは思ってはいないですが、なかなかその生活を変えられません。
それは何故なのかというお話をすることが、「何者か」になれるかなれないかの境目だと思うのと、僕が彼に直接それを言うと、きっと反発して話を聞いてくれないので、これを書くことにしました。
基本、経験談というか昔話だし、“彼”のためだけに書いたものですが、それでもいいという方はお付き合いください。
“彼”には、最後までしっかりと、三回くらい読んでいただきたいのだけれど。

  • <仕事とはいかなるものか>

僕は大学は不真面目に通っていましたが、学問は真面目にやっていました。
って書くと不思議に思えるかもしれませんが、「これ」と決めた教科は、かなり真面目に取り組んでいたと思います。
何故その話を書いたのかというと、まず「仕事」というのは、コレのほぼ逆です。
学問は一字一句丁寧に書かないでも、興味深い「論」とか「視点」に「漕ぎ付け」れば、いいのです。発見があればいいと言えばいいかな。
でも仕事の多くは、いろいろ前提があります。

①真面目に通う
とにかく真面目に通うというか、必要なときに必ずその場にいなければなりません。それが土日だろうがなんだろうが。
②多くの人に見せる
仕事というのはつまり分業の世界です。自分と教授だけ理解できればいいというレベルではないです。提出する書類は万全を期さねばなりません。振る舞いも万人受けする振る舞いが必要です。礼儀とかね。TPOとか。
③理解される
その行動が何のために行われたのか、理解される必要があります。逆に言えば、それさえできれば、ミスをしてもある程度許される場合があります。あなた自身がどういう人間なのかも、誤解なく伝える必要があります。
④組織のパワーバランスを把握し、その対策を立てる
いわゆる「お局様」とか、「PTA会長」とか、「町内会会長」とか、そういうのはどこにでもいます。そして、そういう人が人事に介入することも事実です。そういう人と近すぎず遠すぎない、でも一定の信頼は勝ち得ているという絶妙な位置関係を維持するということが大切です。「そんな政治的な立ち回りは……」みたいなことを思っているうちは、おこちゃまです。どうしてもダメなら、自分がそこを退くか、相手を辞めさせるかになりますが、勝負しかけたら大概負けます。自分が正しいかどうかなどは関係ありません。
⑤簡単な仕事は確実にこなす
他の人がミスしない仕事は、絶対にミスしてはいけません。なぜなら、それはミスを防止する施策を怠っているだけだからです。そうでなくても、そう見られます。他がいくら優れていても、「でもアイツ、あれできないからなー」となること請け合いです。

という5つ程度の前提を満たしたうえで、初めて個人としての特色を見てもらえます。
この辺、閉塞感がありますが、日本のように高度に分業化するシステムだと、労働に関する感覚が一緒でないと、なかなか難しいからだと思います。それが社会通念レベルにまでなっているので、うっかりするとすぐに嫉妬されたり、いじめられたりしますし。
IT業界とかだと、会社によってはあんまりロートルも跋扈していないし、風通しのいいところもあるでしょうから、いくつかは当てはまらないこともあるでしょうけれど、多かれ少なかれ、どこでもあるかと思います。

そんなわけで、誰も教えてくれませんでしたが、仕事ってそんなものです。
わかってなければ、肝に銘じた方がいいです。

  • <100%で仕事をするな>

大学での学問は、それに専心すればいいというか、急に教授から電話がかかってきて「きみきみ、悪いんだけど、来週までに別の論文を書いてくれないかね」と言われることはまずないというか、あったとしてもその場合求められるクオリティはそれほど高くないかと思います(内容の出来不出来という意味ではなく、納品の状態、体裁という意味で)
しかし、仕事の現場では、多かれ少なかれ、この+αが多発します。また、多発しなかったとしても、上記の5つの前提を身体に沁みこませるには、20%くらいの余裕がなくてはできません。
常に、周囲に気を配る程度の余裕は残して、目の前の仕事は80%程度の力で行う。とにかく自分を過信しないことが大切です。むしろ、どうやったら他の人が気持ちよく自分のお願い事を聞いてくれるか、どうやったら楽ができるのか、他の人の手が空くのかということを考えた方がいいです。
そのうち望まなくても、120%やらざるを得ない瞬間は訪れるので、慌てなくていいです。

  • <職業選択の不自由、不平等>

職業選択は自由ではないです。
振り返ったら、「自由だったかもしれないな」って思うだけです。
何故なら時間は有限なので。
一番わかりやすいのは、例えば「新卒しか雇わない」企業とかでしょうか。
また、例えば代議士や医者が、生まれに絡んだ職業だということを考えれば、不平等性がわかると思います。
冒頭にもありましたが、「きっと何者にもなれない」んです。
「なった者」が「なれた者」です。
いい大学を出ようが、就職活動に失敗する人は失敗します。
ステータスは選ぶ側の基準になりますが、選に漏れても死ぬわけでもないし、それで終わるわけでもないです。
詳しくは後述の<夢にたどり着く道は一つじゃない>で。

  • <魅力的な仕事、面白い仕事>

「サラリーマン」って、正直つい最近まで、何やってるかぜんぜんわかりませんでした。
で、何をやっているかというと、情報の翻訳が殆どです。例えば、技術屋が言っていることを、PRとしてどういう言葉に落とし込むとか、どう営業に理解させるかとか。その企画を通すのに、誰の理解を得る必要があって、どういう資料を作らなくちゃいけないのかとか、そういうことですね。
もちろん、他にもいろいろありますが、要はそのままだと何か問題になりそうな部分、既に問題になっている部分を、各々が知恵を持ち寄って解決しているみたいなイメージ?
で、それが面白いのかといえば、面白いです。
プロジェクトが立ち上がって、それがどんどん形になっていくとかはわかりやすいですが、例えば、生産の現場で、みんなの工夫で生産性、効率性を上げて、目標を達成していくというのも、文字では伝わりづらいですが、実際面白いです。
で、そういう体験はどこでできますかというと、どこでもできます。一流企業のあの会社じゃなくても、あなたが今まで全く興味のなかった分野の会社でも。
ただ、いろんな社風はあるので(ブラック企業とか)、そういうのは見抜こうねという話。

  • <安っぽい自尊心を捨てよう>

よく、「プライドを持って仕事をしろ」と言いますが、ここで言う「プライド」と自尊心とは、大きく違います。
「プライドを持って仕事をしろ」というのは、その道のプロフェッショナルとして、これまでの経験、技術を惜しまず、一定のクオリティを保って仕事をするようにということ。逆に言えば、仕事の前日に深酒をするなどの「私」の都合の部分をある程度捨てろということ。人に聞くのは恥ずかしいとか、ここでかっこ悪い姿を見せたくないとか、そのような自尊心の発揮は、みんな一度は通ってきている道だけに、誰でも見透かしますし、最高にかっこ悪いです。上辺の自尊心を捨てて、年長者が若い人に頭を下げて教えを請うだとか、そういう姿こそが、「プライドを持って仕事をする」という意味です。まー、僕もそういうのありましたけどね。自分が思っているよりも、他人は自分の格好を気にしていないし、逆に自分が思っているよりも、他人は自分が取り繕っている姿を見ています。ある程度信用を得たら、等身大を見せてしまった方が誠実だし楽なパターンが多いです。正直な人が多い場面では。

  • <ほう・れん・そうは調理しないと食べてくれない>

http://nikkeiph.com/spinaches/
ほうれんそうとは、「報告」「連絡」「相談」のことだけど、上記の漫画の通りでもある。
つまり、言い方と、言うタイミングを間違えると、自分を不利にしかねない。
ケースバイケースだけど、例えば上司が目をかけている人がなんらかのいけないことをしたのを目撃したとしましょう。それを報告したら褒められると思った人は、上記の5つの前提の④を思い出していただきたい。君は目をつけられて立場を危うくすることでしょう。
そういったとき、例えば決定的ないけないことをしたという証拠を掴み、且つそのことによって間接的でも上の人間に迷惑がかかってしまう状況を証明できるように情報を整理して、味方になってくれそうな人間を抱きこみ、上司にはサラっと「一応お耳に入れておきますが」と報告したという事実を作り(メールとかだと残る)、「これはイケる」と思った瞬間に、そいつがしでかすであろう損失の対応策まできちんとしたうえで、もっと上の人に「上司には報告したのですが改善されないので……」のような報告するとか、そういう「策」が必要になる。表面的な義務を果たしているだけでは、自分を不利にするだけというのが現実。
次に連絡。メールだけで済ませると、「見てなかった」が発生する可能性が高い。メール+電話を徹底すること。カレンダーツールやアラームなどをリマインダーとして活用すること。面倒臭がらず、とにかく会う、遠くの人には電話をするということを心がけましょう。
相談は、相談されても困る話題は相談しないというか、相談する内容をできればYES,NOで答えられるレベルまで、噛み砕いたり調べてから相談するということが大事。「イラッ」とくるような話しかけ方、聞き方をしない、そういうキャラにならないというのが大前提です。上の人に対しても、同僚でも、後輩でもです。

  • <夢にたどり着く道は一つじゃない>

就職産業(リクナビとか)では、「キャリアパス」という言い方をしたりしますが、最終的にどういう経験から、どういう仕事に就きたいかという計画があるかと思います。
多くの人はわかりやすい一本の道を思い浮かべますが、実際はそんなものではありません。
たまたま人がいなくて、冗談半分に「やってみない?」ってお試しで使ってみた結果、うまくいってお互いハッピーというケースは枚挙に暇がありません。とにかく、興味のある職業に近付くのではなく、興味のある人に近付いてください。職はあなたを紹介してくれませんが、人はあなたを紹介してくれるし、何が足りないかを教えてくれます。
そして、そこに誰かの作った足跡がないのであれば、腹を括って、経営の勉強をするべきだと思います。
明日かなう夢はありません。早くて5年後です。

<自信はどうやって身につけるのか>
「その分野の仕事の経験がないから自信がない」なんて言っている人は、結局何をやっても自信が持てません。
何故なら、自信の源泉は「できないことができるようになること」だからです。
例えばフルマラソンをするとか、富士山に登るとか、ちょっと頑張れば割とできることをするのがいいのではないかと思います。その手探りで何かを探って、トライアンドエラーをした経験だとか、諦めなかったことだとかが、結局のところ自信になるのだと思います。
同様に、例えば今やりたい仕事をやれていなかったとしても、「この経験はもしかしたらこういう面ではその分野で活かせるかも」のような発想でそこそこ頑張っていると、事態は好転するように思いますし、僕の事例でいくとそれで好転しました。
翻って、何も頑張らない人は、本当に「何者にも」なれません。

  • <高価な足枷を捨てる>

持っていることで足枷になるものがあります。
特に、それが一見持っていた方が良いものに見えれば尚更です。
顕著な例を挙げますと、「友達」「目標に近い仕事」などがそうです。
まず友達。本当に友達なら、その関係は離れても続きます。一旦疎遠になっても、また近くに来たら仲良くできるでしょう。なので、躊躇う必要はないです。そして、そんな友人関係を一度構築できたのならば、遠くに行って新しい生活を始めても、またそういった人達とめぐりあえます。そこは寂しいけれども、「寂しいから」で留まるのは幼稚です。結婚とかすると、いずれは離れることになるしね。友達、でなくても、例えば趣味のサークルに通えなくなるとか、そういうこと。今はWebがあるから、遠くでも繋がっていたりできるしね。
次に「目標に近い仕事」。この「目標に近い仕事」というのは、「あわよくば」その「目標の職」に就けるという、スケベ心に他なりません。そんな運頼みでいるうちは、一生その「目標の職」には就けません。あなたよりもその職に就きたい、あなたよりも若くて可能性のある、資格も持ってる人達がどこかにいます。条件面であなたは彼に勝てるでしょうか? はい無理です。別の「戦略」をきちんと立てましょう。(つまり、『興味ある人の近くに行け』ということ)あなたが本当に勝利したいのであれば。

  • <それを失ってまで欲しくは無い>

だったら今後一切、「〜を目指している」などとは言わないでください。思わないでください。
人は歩み寄り、手を伸ばせば、大概のものは手に入りますが、何かを抱えて手を伸ばさなければ、欲しいものは手に入りません。
本当に欲しければ、まずは手を伸ばすことです。そこで何かがこぼれたとしても、大概また拾えます。また買えます。
趣味で始めてそこから派生していくことがありますが、それは「作り続けている」からです。「なる」ことばかり考えて「作らない」人は、何者にもなれないでしょう。

僕も離職して、しばらくアルバイトで食いつないだり、某仕事を請けたらその報酬の40万がいまだに支払われていなかったり(U辻さん、いい加減にしてください。出るとこ出ますよ)、就職活動が大変だったり、そのことで自信を失ったり、夢を追って甘いことを考えたり、いろんなことがあったわけですけれども、その中で感じた正直なところです。

そんなわけで、過去の自分が読んだらショックに思いそうな内容ですが、“彼”のために書いてみました。
参考になりそうな人は参考にしていただければと思います。